断層世代も頑張っています!

 前回、愁伯の知人の娘さん御家族のお話をしましたが、同じ知人の奥様がまた超絶に素晴らしい方なのです。

 知人は、愁伯と同じように単身赴任が長く続いて、ご自宅で奥様と一緒に暮らせるようになったのは3人のお子様が社会人となって独り立ちされてからのことらしく、娘さんの離婚話が出始めてからのここ数年のことだということです。

 知人が戻るまで、奥様はお一人で、知人のお母様と同じ屋根の下で暮らしながら三人のお子様を育ててこられ、更にご近所に住まわれる奥様の御両親の面倒をみてこられたたということです。知人の奥様とお子様は知人のお父様が無くなった直後の定期異動に併せて東京から知人が建てた九州のご自宅に入り、知人は単身赴任が始まったらしく、その当時一番下の長男はまだ3歳だったそうです。

 知人のお母様は、お父様が亡くなって独りでいる間、寂しいことを訴え続け、知人家族に「早く自宅に戻ってきて欲しい。」と懇願していたらしいのですが、「知人家族がやっとの思いで自宅に入った途端、直ぐに明るさを取り戻し、老人会を起点に、戻ってきてくれた知人の奥様や三人の孫達のことを顧みることなく、カラオケ、麻雀、ゲートボール、そして社交ダンス等と遊興ばかりに専念してきている。」のだと知人がよく愚痴をこぼしていたことを覚えています。更に、「兎に角、社会人としての常識が足りず、自分のことが第一で周囲への気配りは殆どできず、自分にとって都合の悪い話は常に『私は知らない。なにも知らない。聞いてない。したことは無い。』と関りを否定するにも関らず、自分の為には、知人の奥様やお孫さんだけでなく、老人会をはじめとする周囲の方々のご支援やご協力を仄めかしにより手に入れ、気兼ねなど全くすることなくそれに甘えている。」そうなのです。なのに、他人の不幸事は笑いながら話すので、知人は母親とはいえ叱責することがあるということです。お母様が自宅に関して唯一することは年に何回かの必ず日祝日にする庭の清掃だそうで、知人は「周囲へのパフォーマンスであり自分のPRだよ。」と冷静な分析をしていました。

 奥様から知人のお母様の破廉恥行動を聞かされた知人は、「母の存在が恥ずかしい。」とよくこぼしており、その一方、そんな母親と同じ屋根の下で我慢を続けて暮らし、三人の子供たちを育ててくれた奥様のことを「愛しているなどと言うレベルではない。尊敬しとても大切に思っている。」と真面目な顔で話してくれます。

 そのような状況の中、加えて、奥様の御実家の御父様が骨折したり体調を崩したりして入退院を繰り返されたそうですが、知人の奥様は、奥様の御母様の手足となって入院している御父様のお見舞いや日用品の交換に、そして実家と自宅の生活必需品の買い物に、殆ど毎日東奔西走してくださったそうです。奥様の御父様は、知人の単身赴任が終了する少し前に亡くなられましたが、小柄ながらも家族を助けるため大東亜戦争に出兵し、北朝鮮北部の勤務中に陸軍少尉に合格され、帰還後は九州の有名な企業で働きながら農作物を栽培しつづけ、御両親と7人兄弟の大家族を支えてこられた心優しい方で私も尊敬していた戦中派の方です。

 奥様の御父様が他界される前から、御母様の状態も思わしくなくなり膝や腰の痛みで入院や通院が必要となり、今は加えてリハビリ、歯科の方々が実家に来てくださるのでその対応や週2・3回の入浴の支援と毎日の夕食の世話とをしているとのことでした。

 そのような奥様の状況の中、知人は単身から戻られ、奥様も少しは気が楽になるはずだったところ、今度は知人の身寄りのない伯母の具合が悪くなり、単身赴任中は時折様子を伺いに行ってくれたそうですが、しばしば通院を支援しなくてはならなくなったそうで、やはり女性同士の奥様がいろいろとお世話をして下さったそうです。それから、体調を崩しやがて亡くなられたとのことですが、葬儀や納骨の手配そして遺品の処分について奥様が随分と助けくださったそうです。

 その後今度は、奥様の身寄りのない叔母が高齢に伴う圧迫骨折等身体の不具合が御母様と同じように多発するようになり、平素の様子伺いに加えて通院支援をしていたところ最近急遽入院となったため、叔母の家と病院の間をほぼ毎日行き来するようになっているということです。

 更に、先日、知人のあのお母様が左手首の関節を骨折し掛かり付けの整形外科医から医大病院に紹介され即日入院翌日手術となったため、その入院必需品の準備に尽くしてくれたそうです。退院後の整形外科医への通院やその他の定期的な通院についても支援してくれているとのことでした。

 このように奥様は、現在も、全くの見返り無しに、「情けは人の為ならず。明日は我が身。」と言って御三方の老人女性のお世話を献身的にしてくれているそうですが、加えて、先日お話しした娘さんの三人の子供たち、即ち、お孫さん達が毎日学校から寄られて宿題、食事、入浴をされるため、その面倒も見てくれているということです。

 知人は何をしているのかと問われそうですが、奥様の実家の畑を借りて家庭菜園を作り身体に優しい美味しい農作物を栽培するとともに奥様の手足となって支援しているということでした。

 「今、妻が倒れると、関係者が皆倒れる。」と時折知人が真剣な顔で呟いていますが、不安と奥様への感謝の気持ちが良く伝わってきます。

 断層の世代も素晴らしいのですよね。

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