今年の春に、友人の助言もあり、久しぶりに大腸ポリープの内視鏡検査を受けました。そこで、ポリープが二つ見つかったのですが、検査をしてくださった医院では摘出が難しいところにあるということで、ある大学病院を紹介され、そこで摘出することになりました。その大学病院は、本当にたくさんの所謂重症な患者さんが来られており私への施術は緊急度が低いということで秋まで延期されました。内視鏡を用いた施術ではいつもながらS字結腸通過時にやや苦しさを覚えますが、今回もほんの1時間程度で終わり、見つかっていた二つの内の一つと新たに見つかった一つの計二つを摘出していただきました。
若い時に受けた内視鏡によるポリープ摘出施術は、当日に帰宅でき翌日からは普段通りの生活に戻れたのですが、今回は、1日入院し、しかも1週間は柔らかな消化の良いものしか食べられず飲酒もできないというやや不自由なものとなりました。
入院させていただいたのは内科病棟の4人部屋でしたが、3人しかおらずしかも2人が内視鏡施術後の一日入院の患者でしたので、入院そのものよりもその後の一週間の過ごし方を思案することに悩ましい一夜となるはずでした。
しかしながら、その夜は別のことで悩まされることになったのです。内科の病棟でも御高齢の方が多数おられますが、その中にお一人、騒がしい御高齢の女性の方がおられたのです。その御婦人は少々アルツハイマー病に悩まされておられる様子で、夕暮れ時から特有の行動をとるようになり、「お金が無くなった。」「お金を取られた。」「お金を探してくれ。」「警察を呼んでくれ。」「家に帰る。」「家のものをすぐに呼べ。」等といった内容のことを叫びながら廊下を徘徊されるのです。入室した部屋のすぐ外の廊下にまで来られた時は、正直、『今夜は眠れないかもしれない。』と残念な気持ちになったのですが、その後気持ちが変わっていきました。
というのも、当直の看護師さん達が、入れ代わり立ち代わり、その御婦人のところにやってきて、「どうしました。」「それはお困りですね。」「もう暗いですから明日明るくなって探しましょう。」「もう遅いですから、明日ご連絡しましょう。」「疲れますからもう休みましょう。」等と寄り添ってくださったからなのです。御婦人は納得され、その後看護師さんと御一緒に部屋に戻っていかれる様子ですが、30分程経過するとまた同じような徘徊がおき、その度に、看護師さんが同じように寄り添ってくださるのです。女性の看護師さんも男性の看護師さんも同じように寄り添ってくださるのです。
そのような看護師さんたちの寄り添いに耳を傾けているうちに朝日が昇ってしまいましたが、点滴の交換時期に遅れがちな若い女性の看護師さんに、朝の検温時「毎日大変ですね。お疲れでしょう?」とお訊ねしたところ、「大丈夫です。仕事ですから!」と答えられました。そこで、「いつからお勤めですか?」と訊ね返すと、「今年の3月に学校を卒業して、4月からここで働いています。新人です。」と屈託のない笑顔で答えてくださいました。
欠伸の多さに涙目の面持ちでの退院となりましたが、『あんなに若いのにすでに看護師としての使命感をお持ちなのだ。我国の未来に一筋の光明が見えた気がする。』と嬉しく温かい気持ちになりました。
やはり、最近の若い人は素晴らしいのです。
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