信頼していたM歯科先生からのお返事

 先日お話ししました私が書いたM歯科先生への手紙に対し、そんなに間隔を置かずにお返事が来ました。先ずもって感謝する次第です。

 そのお返事の主な内容は、M歯科先生が、開院するにあたって「やさしさ」をテーマに掲げ、爾来、①患者様に対する優しさ、②働く者同士の優しさを方針として全スタッフへの周知徹底に努めていることとそのことを是非承知おきいただきたいというものでした。

 前者の①については概ね想像の範囲内でしょうから、後者の②についての先生のお考えについて概要を紹介します。(文体は修正しています。)

 「医療においては、チームワークが非常に大切。医師も含めて一人一人の能力が高くスキルがあったとしてもチームワークがとれていなければ満足な医療は提供できない。そのためには、職人のようにストイックに仕事に打ち込むことは素晴らしいとしても、それを他のスタッフに求めすぎて一般社会では考えられないような叱咤及び叱咤された側の萎縮や心の病の罹患そしてついには辞職という状態は回避しなければならない。特に、病気や障害があることにより能力的にできない人へ『障害や病気を言い訳にするな。』や『能力的にできないなんてない。』と責めるのはあまりにも優しさに欠けている。だから、『手を抜くのは許さないが、能力的にできないことは許容しよう。』という方針で周知徹底に努めてきた。仮に障害があっても、能力的に不可能でも、周りのフォローがあれば社会生活に参加できるということはとても意義があることなのだ。だから、その過程で、もしこの方針に賛同できないのであればそれは当院とは方針が合わないので仕方のないことだと思う。加えて、立場上、『状況をよく把握し、適切に判断し、公正に対処』していかなければならないのは当然なので必ず双方の言い分を聞くことに努めている。その上で、今回の件は残念なことではあるがご縁が無かったということでお互いが納得しているので、そのように理解していただきたい。」というものでした。

 愁伯は、「M歯科先生は、組織の経営者として、やはり大変立派に指揮されているのだな。」と思いながらも、残念ながら、ラインマーカーのところには少し違和感が残りました。

 組織の経営者は、所謂、組織の統率者、即ちチームリーダーです。統率者には、まずもって、組織と人を指揮して目的・目標を達成させる責任があります。そのための権限が与えられます。これが、統率者の指揮という側面です。もう一つは、組織や人が、その統率者の元に進んで集まり、積極的に服従して、能力を最大限発揮してくれるような人間性(全人格と立ち居振る舞いに現れます。)を有することが望まれます。これが、統率者の統御という側面です。いずれの側面も統率者が生涯をかけて習得し磨き続けなければならないものです。

 M歯科先生は、上記①と②の統率方針をもって、医院で働くスタッフを指揮していることはよく分かりますが、統御についての関心はいかがなものでしょうか。

 スタッフの心の病の罹患は当人たちの問題だけではありません。なぜなら、組織の人の苦痛を解放してあげられるのは権限を有する指揮官だけだからです。(勿論、周囲の人達が苦しみを和らげることは可能です。)

 ですから、下線の部分には、指揮官として立派な統率に努めておられるということが感じられないのです。もししているのならば、ご縁がなかったと決心するだけではなく、指揮官としての統御についてご本人の振り返りがあるはずなのです。「このような問題があったので、このように環境の修復とご縁の構築に尽力してみたが力及ばず残念であった。今後はこのようにならないようにこうする所存だ。そのためにこの資質の涵養に努める。」くらいのことはあってもいいのにと思ってしまいます。

 統御に関する法的責任はないとは言え、M歯科先生でさえそうなのだから、そんな組織ばかりになってしまうかもしれないこの国の将来が心配ですね。

 皆さんの周囲にはもっとレベルの違う問題ある方が存在しているかもしれませんが、反面教師としてくださいね。皆さんがそのようにならないことが肝心ということは学べますから。

 良好に指揮・統御できる統率力は一朝一夕では身につきませんよ。皆さんも、いつ必要となる日がやってくるか分かりませんから、毎日の仕事や生活の中で実践陶冶するよう留意してくださいね。

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