最近の若い人は素晴らしい!(その8)

 今回は、知人Iさんの息子さんのお話をします。素晴らしい人なのです。

 知人Iさんも、単身赴任が25年程続いたご様子で、奥様とお子様たちには苦労をさせてしまったとよく話されます。単身赴任の理由は、やはり御両親のお世話とお子様たちの学校生活を慮ってのことのようです。現代では、核家族が当たり前の世帯構成となっていますが、やはり年老いた父母の面倒をみるためには、家長は地元で仕事を見つけるか、家族をおいて単身赴任を続けるかの選択をしなければならないようです。

 さて、その息子さんは2歳のころからIさんの単身赴任が始まったため、殆ど父親からの教育を直接受けたことが無く、知人Iさんの奥様に育てていただいたそうなのですが、とっても優しい人に育ったそうです。幼いころは、とっても愛らしく音楽教室のアイドルだったと聞いています。カソリック系の幼稚園の後は、地元の公立の小学校、中学校、高等学校を卒業し、通学できる範囲の大学を経て、自宅から通勤できる大手の制作メーカーに鳴り物入りで入社したことも聞き及んでいます。

 設計部門で採用されたそうですが、会社の人材不足から製作現場で働くようになり、それから次第に口数が少なくなったそうです。そして、ある夜、息子さんが奥様に「胸が苦しく手が寒くて震えが止まらない。」と訴え、二人で夜間の救急診療を訪ねたことがあり、奥様は少し心配されましたが、『初めてのことで疲れたのでしょう。』と言われ、少し様子を見ようということになったそうです。この時はまだ、Iさんはその様子を知らされませんでした。その後、息子さんはいつも通り朝食をして家を出て夜に戻ってくる日常を続けていたそうですが、暫くして息子さんが勤めている制作メーカーの総務の方から奥様に「息子さんが休むようになって2カ月以上が経過し、もうすぐ有給休暇も精神内科の診断に基づく病気休暇も無くなりますので、これからどうするかをご相談したい。」という旨の電話が入ったそうです。

 その状況を奥様から承知したIさんは、週末を利用して、単身赴任先から自宅に戻り、息子さんとお話をして、『工場の現場に入ってから無茶苦茶酷いことを言われ続けてきた。今の会社はブラックだ。周りはそんな様子を知っているのに何もしない。既に先輩も同期も随分と会社を辞めた。救急に行った後日、精神内科を訪ねたところ少し休んだ方がいいと言われて、それからずーっと3カ月ほど会社には行っていない。昼間は図書館で過ごした。』ということを聞いたそうです。Iさんは、息子さんがそんな苦しみを抱えていたことに全く気がついてあげられなかったことを大変悔やみ、「辞めたいと言い出せず苦しんできたね。気付いてあげられずにすまなかったね。嫌だったら、そんな会社辞めたらいいよ。」そして、「何かしたいことがあったら聞かせておくれ。」と言うのがやっとだったということでした。その後、自分の部屋に戻り、そんな大人が未だに存在するということに対する口惜しさと息子さんに対する申し訳なさで、しばし涙が止まらなかったということでした。

 翌週また自宅に戻ったところ、息子さんから「今の会社を辞める。そして、もう一年だけパソコン関係の専門学校に行かせてほしい。」とお願いされたそうです。Iさんは、『ふっきる選択をしたのだね。大丈夫みたいだ。』とうれしく思いつつも、「わかった。でも、その後は、必ず仕事を見つけるのだよ。」と涼しく答えたそうですが、「はい。」という返事に顔を向けられなかったそうです。

 息子さん、素晴らしいですね! 自分の弱さに気がつき、自分の現状と将来について、自分で考えて、決めた上で、くだらない環境からまず離れ、更にポテンシャルを上げるための支援を自分から口にしてお願いしたのですよ。凄いと思います。自分で自分を救ったのです。

 息子さんは、専門学校を終えると、初めて親元を離れ、他県にある小さな広告会社で顧客のホームページ等を作る仕事に就き、8年程恙なく勤めたそうですが、最近、県内の中堅会社の広報部門に転職をしたそうです。県外の広告会社も県内の会社の広報部門も、自分で見つけて、試験や面接を受けて採用していただいたということでした。そして、今回の転職の理由は、『Iさん夫婦も高齢者の仲間入りをしたので何かあった時に対応しやすくしたいから。』ということらしく、やはり奥様を通して知ったそうです。

 息子さん、素晴らしいでしょ! 人生のやり直しを決めて、自分で努力し、キャリアを重ね、併せて、自分の人間性を成長させているのです。凄いと思います。そして優しいですよね。このような若い人で世の中が溢れると、きっと世界は素晴らしいものになるでしょうね。

 世間では、大都会や世界に出て活躍し、キャリアを重ねて、地位と名誉と財産を築くことが素晴らしい人の条件のように思われる傾向があるようですが、人それぞれに人生の目的・目標も、幸せの基準も価値観も違うのですから、人それぞれに成功の絵姿も素晴らしさも違うのです。

 皆さんの周囲にも、そんな素晴らしい方々が、たくさんおられるのではないでしょうか。

 目にしているのなら、あるいは思い出せたのなら、うれしく思い、心の中で拍手しましょう。そして、そのような環境の中にいることに感謝し、続くことに寄与しましょうね。

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